豊かな時代か?

サマセット・モームの『魔術師』(ちくま文庫)を20年近く前に購入しました。

その当時はその原書なんてとても手に入るなんて思えませんでした。もちろん不可能というわけではなかったと思います。東京の洋書専門店に注文するか、海外の書店に注文して取り寄せるかすれば、手に入れることができたのだろうと思います。でも、そんな気になることもありませんでした。

手元にその『魔術師』があったので、ネットで調べてみると、そのテキストデータも朗読のオーディオデータも入手可能でありました。

さっそくダウンロードしてみると、10分も掛からずに入手できました。

今、男性の声で朗読が流れています。

ほとんど意味がわからない英語朗読を聞きながら、しばらく、この現実が「豊か」といえるのかと考えていました。

環境は当時より良くなりました。

でも本当に「豊か」になったのでしょうか?

どんな本も翻訳が出ているのと、誰もが少なくとも英語であるならば原書で読む能力があるのと、どちらが豊かなんでしょうね?